かわいい女になりたくて 第1話

同窓会妄想

今日も女子達が隣のクラスの藤田くんがかっこいいという話をしていた。藤田は小学校の時からサッカー部キャプテンで全国大会2位になるなど、ひときわ目立つ存在だった。運動ができるだけでなく、勉強もできる。見た目も大人びていて背も高くバランスの良い体格をしている。
女子達の人気になるのは自然なことだった。由美は小学校の頃、何度か同じクラスになっていたし、クラスの女子達の中でリーダー的な存在でもあったので、自然、男子のリーダー格であった藤田とは親しくなった。親しいとは言っても、小学生の話である。色恋の話ではない。
「藤田くん、6組の今井さんと付き合ってるらしいよ」
部活を終えた後、夕暮れが夜に変わり、片付けをしていると、同じ陸上部の女子達のそんな言葉が暗がりの中から聞こえてくる。女子達がそんな話をするのは毎度のことだが、由美は会話に入っていかない。
「部長、聞いてました?藤田先輩て今井さんて人と付き合ってるんですか?」
「えっ、何?ゴメン、聞いてなかった。」
聞こえていなかったフリをした。藤田は中学に上がってからも変わらずモテている。後輩女子にもそのファンは多い。
「藤田先輩が今井さんてひとと付き合ってるかどうかって話を畑中先輩としてたんです」
「私は知らないよ。藤田とそんな話しないしね。」
「え〜、ほんとですか〜?部長、藤田先輩と仲がいいじゃないですかあ」
由美は興味がなさそうに答えた。藤田が自分のことを恋愛対象に見ていないのは分かっている。小学生の頃からからかい合ってきた中で、友情があるとは思っている。
夏の風が吹いている。蝉の音もうるさい。
小学校の校庭を追いかけあった男子も女子も、中学三年ともなると、すっかり一丁前の大人を気取って、誰が好きだ惚れたなどと話している。
由美は、そんなとき、決まって理由の分からないもどかしさや居心地の悪さを感じるのだった。恋愛など自分には似合わないと思う。

サッカー部もちょうど練習を終えたようで、グラウンドから黒い影がぞろぞろと近づいてきた男子の汗の匂いがここまで漂ってくるようだ。

「お、モンキー、黒すぎて見えねえぞ」

「黒すぎるってなんだよ。そんなに日焼けしてないよ。日が沈んだだけでしょ。」

サッカー部員たちの黒い塊の中から、同じ小学校から上がったサッカー部の知り合いが、私をからかうように話しかけてきた。他のサッカー部員たちもこちらを見てニヤニヤしている。その中に、藤田がいるように見えて、急に自分の顔が高調したように思えた。

私は何人かの男子からモンキーと呼ばれていた。小学校の頃、運動をしていて活発だったことや単純に猿に似ているという理由でついた、いかにも小学生らしいあだ名だった。中学生になると、それまでわたしをモンキーと呼んでいた男達は急に恥ずかしくなったのか、そんなあだ名で呼ばなくなったが、それでもモンキーと呼び続ける男子たちはいた。

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