夏だ 走れ

生き方

夏だ、海へ、山へ、急げ

かつてこのフレーズをアナウンサーになりたくて繰り返し言っている奴がいた。アナウンサーになりたい人用のテキストか何かに載っていたフレーズだった。

周囲の俺たちは、そいつを馬鹿にして、笑いながら、何度もそのフレーズをそいつに言わせた。部活の始まる前に、練習の終わった夕暮れから夜に変わる夏のグラウンドで。

そいつは馬鹿にされていると知ってか知らずにか、半笑いで、もう何遍もそのフレーズを唱えた。滑舌の悪い男で、アナウンサーになるような見た目の良い男ではなかった。どこかハイエナを思わせるような見た目の奴だった。

夏だった。ハタチを越えたばかりの俺たちは、それを夏とも知らずに、しかし、毎日を贅沢に過ごしていた。

そいつはアナウンサーにはなれなかった。いま、そいつが何をしているか知らない。

俺たちは、思い思いの方向に走ってきた。海を目指したもの、山を目指したもの。たどりついたという話は、まだ聞かない。

俺たちの夏は終わってしまったのか。

夏は何度でもくる。俺たちの目が輝いている限り。

夏だ、海へ、山へ、急げ

コメント

  1. 夏満喫男 より:

    なるほど。