禁欲13 無理する男

生き方

大学生の時、友達と長所短所の話になって、俺のいいところてなんだと思うと聞いたら、

「無理してるところじゃね?」

と言われた。

「なんだよ、それ。無理してるて、ふつういい意味じゃねえだろ」て聞くと、

「無理して頑張ってるとこじゃね」

と言われた。

そいつは変わった男だった。キッズリターンに出てた若き日の安藤政信似の男前、いや、それ以上の男前で、運動神経抜群。筋骨逞しく、体格もきれいだった。豹や馬のような美しい体だった。

寡黙で、余計なことはべらべらしゃべらず、おそらくすごくもてたはずだが、女のケツを追い回すようなこともしてなかった、はずだ。

強いのに穏やかで、いや強いから穏やかで、謙虚?で、オラオラすることもなかった。不自然な謙虚ではなく、自然に謙虚だった。もちろん媚びることもなかった。

弱音や愚痴は聞いたことがない。

早寝早起、自然体な男だった と思っていた。でも、人知れず無理ばかりして頑張っていたのかもしれない。

不思議な奴だった。俺の家に来て、

「この家、なんかいるな」と言っていた。

頭にこびりついて離れない言葉が、誰しもある。何気ない言葉、でも一生忘れない言葉。

「無理して頑張ってるとこじゃね」

いつも思い出す。

心にこびりついて忘れない言葉
誰しも、そういう言葉を、忘れられない言葉というものを、持って生きている。何気なく発せられた言葉。きっとその言葉を発したひとは、こんなにも長く誰かの胸の中にその言葉が残っていることを想像だにしていないかもしれない。もちろん、意識して誰かの記憶...

 

 

 

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